こんにちは、まるおです。
多くの動物を診察している中で、比較的多く見る機会が多いクッシング症候群について解説していきます!
実際に、犬の内分泌疾患では、糖尿病に次ぐ発生率と言われています。
しかも、症状が似ているので、なかなか自宅で判別をつける事はできない病気です!
今回は犬のクッシング症候群という病気の解説に加えて、治療対象となるかなども書いていきますよ!
クッシング症候群ってどんな病気?
副腎皮質機能亢進症と言って、副腎という臓器から出るホルモンが過剰に出ている病気なのです。
逆に、ホルモン分泌が少なくなるアジソン病という病気もあるのですが、今回は過剰に出る方のお話を。
その前に、、
副腎ってどんな臓器?
腎臓の横に存在する小さな豆のような臓器なのですが、とても重要な役割を担ってます。
血圧、糖分(血糖)、水分、電解質(塩分)などを調節し、体が上手く働くためにちょうど良いバランスでそれぞれを調節しているんです。
そのため、生命維持のためには必要不可欠ですが、多すぎても、少なすぎても問題となるわけです。。
副腎は皮質と髄質という場所で作られるホルモンが異なります。
クッシング症候群では、これらのホルモンが過剰に産生されることで、高血圧、高血糖、などが起こるのです。
副腎からホルモンが産生される仕組み
実は、副腎という臓器は、それ自体の判断で動いているのではありません。
下垂体という脳にあるホルモンのコントロールセンターのようなところからの指令を受けて働いているのです!
という流れで機能しています。
そして、体の中で必要量に達したと判断されれば、負のフィードバックと言って、『STOP』の信号が、コントロールセンターである下垂体に送られる事で完結します。
クッシング症候群では、このコルチゾールなどのホルモンが常時、過剰分泌されている状態の病気なのです。
ここまでで、副腎からホルモンが出る仕組みを理解した方は、下垂体と副腎どっちが悪さをしてるの?
と思うのでは無いでしょうか。
そうです。
コントロールセンターである『下垂体』と生成所である『副腎』のどちらも原因となります。
なので、クッシング症候群には、下垂体性と副腎性の2種類の病態があるのです。
実際に、犬の場合は、下垂体性が約85%、副腎性が約15%と言われています。
症状
飲水量や脱毛で異変に気づき来院される飼い主さんが多い印象です。
実際には、パンティングしている子も多いですが、夏で暑いから気づかなかったなどで気づいていないことも多く、
聞いてみるとそういえば昔はしなかったパンティングをするようになってるのかなーなんていうことも多いんです。
気をつけてくださいね!
検査
血液検査
血清アルカリホスファターゼ(ALP)の上昇
コレステロール値の上昇
高血糖
白血球の異常(好中球の上昇、リンパ球減少など)
画像検査
など
クッシング症候群では、上記の臓器が腫れていることが多いのが特徴の一つです!
中には、それぞれの臓器が悪性腫瘍として腫れていることもあるので、その可能性を探るためにも画像検査にてチェックしてもらいましょうね!
上記のような症状や検査でクッシング症候群を疑う場合には、
以下の検査を行い確定診断を取っていく必要があります。
ACTH刺激試験
本来正常な犬では、ACTHの刺激を受けた副腎がコルチゾールを放出して、一定時間でSTOPがかかるので、コルチゾールの放出は落ち着きます。
これを利用した検査で、ACTH投与後のコルチゾールが基準値以上であれば、クッシング症候群と診断されます。
低容量デキサメサゾン刺激試験
ACTH刺激試験で、グレーな結果が出たり、陰性だったが症状的にクッシング症候群を疑う時に行います。
高容量デキサメサゾン刺激試験
ACTH刺激試験などでクッシング症候群と診断した時に、その原因が下垂体性なのか副腎性なのか判断する時に行います。
尿コルチゾール・クレアチニン比
クッシング症候群の場合、尿中にもコルチゾールが過剰に検出されます。
この検査が陽性であっても、クッシング症候群とは確定することまでは言えません。
しかし、この検査が陰性であれば、クッシング症候群を否定することができます。
CT、MRI検査
CTやMRI検査で、下垂体や副腎や腫れていないか、また腫瘍を疑う時に周囲の血管などへの浸潤の有無などのチェックにも必要な検査になります。
クッシング症候群かどうかのチェックだけであれば、必須の検査では無いですが、治療方針の決定などの際には有用な検査になります。
治療
クッシング症候群の治療目的は?
この2つが治療の目的となります。
併発疾患とは?
コルチゾールが過剰な状態が続くことで、致死的になる可能性がある併発疾患があります。
(糖尿病、高血圧、血栓塞栓症、膵炎などが代表的な併発疾患です!)
治療しないといけないの?
ただし、検査上の数値は高いが、臨床症状が全く無い症例も多く存在します。
このような症例に対しては、併発疾患に注意する必要はありますが、治療開始せずに経過観察とすることも多くあります。
診断を受けた獣医の先生とよく相談して今後の方針を決めていきましょう!
いざ治療開始という時には、、
外科治療、放射線治療、内科的治療の3つがあります。
悪性腫瘍を疑う時などに外科や放射線という選択になりますが、
実際には、内科的治療を行うことが多いです。
内科的治療では、ホルモン合成抑制剤を内服することで、体内のコルチゾール濃度を基準値まで下げることを狙います。
内服して落ち着けば治療終了というわけではなく、基本的には継続して内服し続けていくという生活になります。
実際に、良い値で維持できる薬の量は、それぞれ異なるので、獣医師の先生と相談しながら決めていきましょう!
予防
残念ながら、予防の方法はありません。
そのため初期症状に気づき、早期に診断してもらい治療開始していくことが結果的には寿命を全
うすることにつながります!
まとめ
症状的には、慢性腎臓病や糖尿病などの他の病気と同じ病気なので、お家で判断する事は不可能だと思います。
多飲多尿で疑う疾患は様々ありますが、どれも重症化すると命に関わります。
そのため、早期に病院受診し、診断し治療開始していくことが何よりも大切になりますね!
では!
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